2013年9月29日日曜日

【本】”共震”相場英雄著 小学館刊


「震災復興に奔走する県庁職員が殺された!」
で始まるミステリー。
支援・復興に群がる暗部を、”震える牛”でも光った、
相場さんの鋭いナイフでえぐり出される...
おそらくはきっと、なハナシ。
読むべき。

ただ...それにも増して、あの日、その直後にあって、
やはり伝えきれていなかった現実、
に割かれるページの枚数たるや。
その描写は演出ではないです。

あらためて、あの日その直後の事を思い出しました。
そうか、たった3日の事だったんだ。
もっと、凄く長い時間だった気がする。
でも、本人には無限に長かったろうな...。

2013年9月21日土曜日

【本】”自転車少年記”竹内真著 新潮社刊(ミヤザキ店長 ユカさんリコメンド)

【本】”翼はいつまでも”川上健一著 集英社刊 

(【ナツヨム】田口店長選書)


”↑がお好きなら”
と言って、おすすめ戴いた本。

残念ながら、スリルとサスペンス、めくるめく大冒険の
超エンターテイメント!をご希望の向きは、また今度♪

って、このタイトルでそこは期待しませんよね(笑)。

また、すっと染み通る大好きなお話を
ひとついただきました。

本書を読みながら、BGMの様にずっと考えていました。
自転車の...バイクもそうですが、
二輪車である以上超えられない、
ふたつのの大きな大きな特徴。

それは、
”ひとりでは、自立できない事”
”静止していては自立できない事”

協調しないと、直立している事もままならない
バランスに支配された世界だけど、
だから生まれる身と心のバランス感。

そして不自由な縛りとのトレードで得られる
代え難い自由!

なんてね(笑)。

全体に真っ直ぐで,”気持ちのいい”お話です。
この本を傍らに置いておきたくなる気持ち、解りました。

自転車が欲しくなっちゃったなぁ...(何度目だか)^^;。




2013年8月17日土曜日

【本】”田宮模型の仕事”田宮俊作著 文春文庫刊 (【ナツヨム】ミシマ社渡辺佑一さん選書)

”好きな事は仕事にしない方がいいよ”
とは、
自分が就職したバブル余韻(弾けた直後)の頃、
よく社会の先輩方から訳知り顔で云われた台詞。

ま、真意はいろいろ在るんだろうけど。

生い立ちや、環境や、性格や、そもそも指向や、
みんな違うので普遍的な答えなんか無いのでは?
が、
冒頭の台詞に対する今の答え。

...だけでは身も蓋も無いので、もうちょっと想いを。

好きな事を仕事に選んで、
そこに潜む好きじゃない現実も見て、
手も下して、塗れて、
それでも好きで居て、
その好きな事で世を、誰かをシアワセに。

...している人は、大人、だなぁ、と。

ハナから好きな人、
後から好きになる人、
そこに差は無くて、
深さ、広さ、なのかな。

なんて、いろいろ考えてしまいました。

この本は総じて痛快!!
紆余曲折あっても、しっかり考えて、
成功にたどり着く物語は気持ちいいですね!

作中に出てくる、様々な人々との
思いやりのキャッチボールも素敵です。

伝説の”タミヤの零戦”、やっぱり作って見ようかなぁ。
(プラモ苦手で、素組で終わっちゃうんだけど(苦笑))

【本】”翼はいつまでも”川上健一著 集英社刊 (【ナツヨム】田口店長選書)

おっさんの少年心が”甘酸っぱい!”小説です!
...ちょっとネタバレ?

中学生最後の夏、

全力で取っ組み合った部活に水を差す
対話なき力ずくの”大人たち”への抵抗。

ラジオから聞こえてきたビートルズでの
唐突な脱皮。

まだ知らぬ性への、はち切れそうな
幼い「少年の」好奇心。

恋。

そして”護る”心の芽生えが導いたのか、
気づか無かった衝立がバタバタと倒れて行く様な
視野の広がり。

自分の変化からの、ずっとあった葛藤との和解。

こんなドラマチックでも、爽やかでも無かったけど、
14歳の自分ー!!
思い出しちゃったな、いろいろ。

【ナツヨム】田口さんのキャッチ
”もし、14歳の自分に声を掛ける事ができたら、
あなたなら、どんな言葉をかけますか?”

14歳男子、の内部的ないろいろがバレバレで、
なんともはや、なので、男子限定(笑)で。

...作中の多恵ちゃんに、やられちゃいます。
14歳の部分が、ね(笑)。

2013年7月28日日曜日

風立ちぬ(ネタバレあり?)

クロニクル形式の映画は、
どうしてもダイジェスティブになりがちな気がします。
長い実時間を、短い上映時間に押し込む、という宿命ゆえに
”このシーンが描きたくて”
という監督の想いつのった、
ぶつ切りの「シーン集」のような。

だけど、この映画は違ったと思います。

全てのシーンに、厚みと含みが。
一度観、では足りない様な。

映画の作り、絵について、
特別に新しい表現や、
「これでもか!」という刺激に富んだ、飛び抜けた技巧などは
無かったと思います。

でも、やはり熟達の技巧に満ちた職人仕事、
美しく「厚み」のある絵。音。

長い人生を重ねて来た皆さんが、
厚く塗り重ねた癖に、
一見そつなく、素っ気なく見える造り。

不親切な造りなのかもしれません。
”こう見ればいいんだよ”
という案内が無く、
登場人物の人生と時代の空気、出来事を淡々と見せられる。
当時の人間達の常識、考え方。

観る側が、どれだけ感じられるのか?
で、楽しめ方が大きく変わる様な気がします。

インプレッションを書かれたブログ...
なにやら主人公の1面側を捉えて、
その面からの視点で作中の出来事を拾い出して構成して、
「いままでにない作者のこんな面を見つけだした!」
と書かれていたモノを読みました。

まあ、そう見ればそういう面もあるでしょう。

ちょっと、「紅の豚」で聴いた台詞が耳に。
「...あなたのお国より、もうちょっと人生が複雑なの。」

大正時代の、地方の良家の兄妹の素敵な言葉遣い、
設計者が、まだ見ぬカタチを想いの中で作り上げて行く過程を
ビジュアルに見せるその円熟の表現。

そして新しく、身に迫る地震の表現。

ものづくりの功罪。不可避な時代の翻弄。
人の想いと運命のままならなさ。
人間の不器用な事。

原理主義的に一元化されつつありそうな時代の雰囲気の中、
考える眼を持って観ると、深いんじゃないかなぁ。

とにかく、涙もろいワタクシはボロボロと(苦笑)。
野村萬斎のカプローニ博士、よかったなぁ。

あ、トトロ、的な、ファミリーなお愉しみには向きません。
はい。



2013年6月30日日曜日

【本】”残月−みをつくし料理帖”高田郁著 角川刊

シリーズもいよいよ大きな”転”なんだなぁ、という巻。

読後、ふと我が身に。

特に根となる土地も無く、代を重ねた生業も無く
手ずから起こした事業も無く。

資産、蓄えなど言うに及ばず(笑)。

幕を引く時、どこで何をしているんだろう?

今は、取りあえず
不安ではなく興味が。

「ったく、忙しくてやりたい事ができやしない」
てのが良いのかもねぇ。

なんて考えちゃう巻でした。

祝!シリーズ再開♪

2013年6月23日日曜日

【本】”関係ー未来”大鋸一正著 文藝掲載

未来。
この次の瞬間の生と、等しく迫り来る死。
そして生きる事は関係する事。

その生と死を、「生」と「死」として直接描くのでは無く、
小さな生活の描写の中で僅かに浮き彫りにしている。
...様に感じた作品でした。

実際の生活に、生と死は、取り立てて語らずとも
普遍的にあるもの。
でも、意識し続けてはいない。疲れちゃう。

でもそれを語る際に、真正面から
「生き関わり合う、とは」「死とは」
と語るより、
敢えて語らず、

普段の景色の中でほんのちょっと浮き立たせて見せられたほうが、
身に迫り、
考える。

のを、
教えられた気がしました。

【本】”想像ラジオ”いとうせいこう著/文藝掲載

今回は、ちょっとネタバレというか、積極的に先入観を与える様な書き方なので、
数は多く無いと思いますが、このブログを読んで戴く方に、
「この本これから読む!」
という方は、以下はお読みにならない方が良いかもしれません。

先の震災の津波被害で死に至り、
しかも原子力災害で遺体回収もされないまま漂う魂が、
超現実の「ラジオDJ」となり、
他のさまよう魂達とのコミュニケーションを経て成仏していく姿...。

”ノーライフキング”の様な、ちょっと突飛な表現アイディアで、
あの大惨事に対する心の納め処を空想してみたのかなぁ、と。

著者の、あの軽妙な語り口が
全編から聞こえてくる様な文章です。

正直に言うと、これは呑み屋の酔譚で、
「...ってさ、こんな感じで救われてってくれてたら、良いかもなぁ」
ぐらいで聞いたなら、
受け入れられた気がします。
むしろ良い話。

でも、販売される書籍の文章として読んでしまうと、
「どう?ちょっと突飛で面白い表現アイディアでしょ?」
という、
違和感と浅薄さのようなものが。
碌に文章も書けない人間が失礼なのですが。

私は震災の被災当事者ではありません。

この文章で心救われた方もいらっしゃるのなら、
その気持ちに冷や水を掛けるのは本望ではないのですが、
どうしても拭えない違和感が残りました。

触れられたく無い部分を「勘違い」で語られているようで、
かえって傷つく方々が居ないかなぁ...と。

非常に複雑な読後感でした。

2013年6月16日日曜日

背水の陣

背水の陣を敷く、って、嫌いなんですよね。
精神論も。
「最後の活路」「生還の保証」が見えているから全力で闘えるんじゃないですか。
ダメな場合のオプションを語って、「後ろ向きな事いうな!」と激昂するのはちょっとどうかと思うなぁ。

それじゃ部下は全力をださない?...脅迫しなきゃださないんじゃ、
どの道まともには続きませんよね。

「ここ一番の背水の陣、奇襲作戦」
は、本当に一生に一度くらいしか使うべきじゃないと思います。

そういう時は絶対あるとも思うけど。
そういう時は脅迫ではなく、信頼で繋がってなきゃ、負ける。
と思う。絶対。

それに、「後が無い」を常に要求してたら、兵士たちは皆壊れちゃう。
だから、それを
「避け続ける事」
に全力を尽くすべきなのでしょうね。
指揮官は。

ま、優れた指揮官じゃないので、部下に救われっぱなしだけど。
(苦笑)
努力はしようっと♪

http://ja.wikipedia.org/wiki/永遠の0