2013年7月28日日曜日

風立ちぬ(ネタバレあり?)

クロニクル形式の映画は、
どうしてもダイジェスティブになりがちな気がします。
長い実時間を、短い上映時間に押し込む、という宿命ゆえに
”このシーンが描きたくて”
という監督の想いつのった、
ぶつ切りの「シーン集」のような。

だけど、この映画は違ったと思います。

全てのシーンに、厚みと含みが。
一度観、では足りない様な。

映画の作り、絵について、
特別に新しい表現や、
「これでもか!」という刺激に富んだ、飛び抜けた技巧などは
無かったと思います。

でも、やはり熟達の技巧に満ちた職人仕事、
美しく「厚み」のある絵。音。

長い人生を重ねて来た皆さんが、
厚く塗り重ねた癖に、
一見そつなく、素っ気なく見える造り。

不親切な造りなのかもしれません。
”こう見ればいいんだよ”
という案内が無く、
登場人物の人生と時代の空気、出来事を淡々と見せられる。
当時の人間達の常識、考え方。

観る側が、どれだけ感じられるのか?
で、楽しめ方が大きく変わる様な気がします。

インプレッションを書かれたブログ...
なにやら主人公の1面側を捉えて、
その面からの視点で作中の出来事を拾い出して構成して、
「いままでにない作者のこんな面を見つけだした!」
と書かれていたモノを読みました。

まあ、そう見ればそういう面もあるでしょう。

ちょっと、「紅の豚」で聴いた台詞が耳に。
「...あなたのお国より、もうちょっと人生が複雑なの。」

大正時代の、地方の良家の兄妹の素敵な言葉遣い、
設計者が、まだ見ぬカタチを想いの中で作り上げて行く過程を
ビジュアルに見せるその円熟の表現。

そして新しく、身に迫る地震の表現。

ものづくりの功罪。不可避な時代の翻弄。
人の想いと運命のままならなさ。
人間の不器用な事。

原理主義的に一元化されつつありそうな時代の雰囲気の中、
考える眼を持って観ると、深いんじゃないかなぁ。

とにかく、涙もろいワタクシはボロボロと(苦笑)。
野村萬斎のカプローニ博士、よかったなぁ。

あ、トトロ、的な、ファミリーなお愉しみには向きません。
はい。