2014年12月3日水曜日

【本】「自分」の壁 養老孟司著 新潮新書刊

「”自分探し”なんてやめなさい」
お、自分も全く同じ意見を...
と思って手に取ってしまいました。

同じ...?生意気な(笑)。

いつぞやブームになった「バカの壁」の、養老先生の本。

「バカの...」は、流行ったが故に、
生来の天邪鬼と、タイトルの居心地の悪さから
読んでいなかったのですが、今回はサブタイトルが気に入って。

おこがましい言い方ですが、考え方の指向が近いのか
私が普段思っている事をより深く、
鮮明に説明されてしまいました。

例えば、個性について。
「...「本当の自分」は、徹底的に争ったあとにも残る。
 むしろ、そういう過程を経ないと見えてこないという面がある。
 最初から発見できるものでも、発揮できるものでもありません。」
「...徹底的に真似する事から個性は生まれるのです。」

...まとめられてしまった!
ま、それを期待したから買った、のでしょうけどね。
「自分」(苦笑)。

他に、政治、エネルギー問題や、SNSなど、
割に普段ホットに反応してる事象にも話は及ぶのですが、
ここではかなり「冷水」を浴びせられます。

一見冷めている...。

のですが、養老先生の方法論の方が、
実はもっと過激だという事に気付きました。
これは...。

ちょっと間をおいて、再読しようと思います。

http://www.shinchosha.co.jp/book/610576/



2014年10月12日日曜日

【本】O介 大鋸一正 著 河出書房新社刊

やっと落ち着いて読める時間が得られたので、
以前購入してあった本書を読みました。

忙しさに流され、怠け積まれる高さを増すばかりの本達を
最近意識して読み進める様にしていて、割に”読んでいる時間”が増えて
気づかされた事があります。

どうあれ小説は、文字というツールのみで
読み手にその物語世界の情景を想起させねばならないのですが、
立ち上がってくる世界の距離感に、いろいろの違いがあるな、と。

TVや映画を観る様に「眺める」距離感で、イメージが普遍的でぶれないモノ、
情景の中に臨場して、視界が内部からのものに取り込まれるもの、
そして、引き込まれて物語の関係者の距離に置かれてしまうもの。

それは優劣や凄い、そうでない、というものではなく、
なんか、”そういうもの”。
(↑こういう所がちゃんと表現できるのがプロなんだろうなぁ(笑))

大鋸さんの小説は、否応も無く
”関係者の距離感”に連れて行かれます。

関係者の距離感...現実の世界の様に、当事者=読者毎に
見えてくる物が異なる世界、だろうな、と。

その距離感で、
「存在」は相対性で築かれているんだよ?
という”危うさ”を
めまぐるしく立ち位置を変えながら見せられて
ちょっと軽く目眩がするような。

そんな読後感でした。

2014年10月4日土曜日

”派遣”って、”新しい働き方”へのチャレンジだったんだよ、1988-93年の5年間くらいは。


以下、あくまで現場所感なので、精密さ正確さは欠いていると思います。
資料的に不正確ですので、その辺の厳密さは必要ならご自身で補完を。
すみません^^;;。

※雑記にて、結論薄くすみません(先に陳謝)。

さて。

キャリアとスキルを手に、会社に縛られず「実力」で業界を駆け回る...。
を、割に本気で追っていたと思います。その頃の「派遣」。

なので当時は、割に”エリートど真ん中”な出自のみなさんも、
この”派遣”という業界に一杯いらっしゃいました。
が、1994年あたりに来た
「不況の波+労働者派遣法の取締強化」
で、大手の派遣先さんがこぞって派遣切りしたら、
彼らはきれいさっぱり居なくなっちゃった。

1996年頃、マネーは戻らないけど仕事は増え始めました。
だけどバブルからの一連の不況で、コストが高く
「減らしたい時に切れない」
正社員は採用したくない、というニーズから、
再び派遣が活況を。
ただ、こんどは徹底した”コスト目線”でのニーズ。
並行して年々厳しくなる、大手の正社員への
「労働者保護にまつわる規制」(←とにかく労働時間の短縮)
の強化もあって、不足する必要な労働を
できるだけ低コストで派遣社員に振りむける...方向に。

当然、上記ニーズなのだから
「派遣→正社員」登用、など人事担当さんは考えていない。
なのですが、日本の労働行政は
”正社員を是、派遣は一時的なもの”
という前提なので、溢れ始めた派遣労働者を前に
「労働者派遣法の改正と、適用取締強化」
を打ち出します。

これにより、
”一定期間同じ仕事をさせている派遣社員の正社員登用の義務”
”正社員と派遣社員の間の顕著な残業時間差への監査指導”
など、派遣を買う側、「派遣先」の義務が強化され、
”雇いたくないから派遣使う”
のメリットが失われてきます。

そこで登場したのが「業務委託(業務請負)」。

”人を借りて来るんじゃなくて、業務を委託するんだから
人に纏わる煩瑣な責任(訴追されてぐったり)は不要♪”

今ココかなぁ。

自社の構成員としてではなく、あくまで
「他社に注文して結果を得る」
なので、
「業務内容とアウトプットが明確でないと成立しない」
のですが、現場は
”今まで通り派遣が使いたい...派遣がだめになった代わりでしょ?”
と、委託業務内容のメモすら作らず、派遣と同じ様に使って、
「偽装請負」
として摘発されはじめています。

それを受けての最新?は、
最近新聞で見たのが
「格差付き正社員採用」
非正規で自社内に働いている社員で、めぼしい人に声をかけ、
「一般正社員」
とは若干(?)異なるけど、「正社員」に「登用」する、と。

いずれも、昔からある業務の形態なのですが、
「如何にして正社員外で正社員の仕事させるか」
に知恵を絞って、
意訳した運用形態を作るのに”躍起”さを感じますね。

ふう。

思うのは、二つ。

「仕事」と、「作業」の差に理解が無くないですか?

「本分」を失っていませんか?

考え方の根底に、
”誰がやっても同じ”
”切り分けてコストさげて”
”・・・”
という考え方を感じます。

...機械的な「作業」であれば、まぁ可能だと思いますが、
”何事か、意味ある結果にたどり着くための総合的な行動”
としての「仕事」は、そういうモノでは無いのでは?

あと、自分の会社が何事か発意し、
また営みを続けるために行う
「仕事」。
まずは”自弁”が本分なのでは?

その本分なく=自弁する気さらさら無く
コスト目線で丸投げ...しかも机を並べ、
同じ床の上にいる”処遇の違う”人間に。

...そこに疑問や違和感すら持たず、
慣れて”当たり前”と思っているメンタリティ...。

最近、目にするモノコト、メジャーなものには
軒並み
”作業”のみで生まれた、”仕事”のこもらない物
を多く感じています。

お互いに本分を全うし、健全に高め合う仕事の仕方。
小さな所にはちゃんとあると思うのになぁ...。

派遣から委託、を歩いて来た目線から見える
今の風景は、こんな感じです。

雑記。





2014年7月27日日曜日

【本】たまらん坂 黒井千次著 講談社刊 ”ナツヨム選書/長谷川書店・水無瀬駅前 長谷川さん選” 

”ナツヨム”が無ければ、
全く手に取る事の無かったと思う本です。

作も作者も全く知らず。

中央線沿いに点在する、ちょっと奇妙?な地名を軸に
停年(定年、ではなく左記の表現)近い五十路の男達の
ほろ苦さや、微妙に”痛い”心の動きが綴られた短編集。

実はちょっと得意ではない
”文学”的文章に戸惑いつつ、でも
忌野清志郎が”若い男の声で..."と綴られる時間の距離感、
全てリアルに、今も通り過ぎる地名、
そして私も間近に迎える
サラリーマンの五十路の心情世界...。

不思議な散歩を終えた様な読後感でした。

あらためて、訪ねてみるかな?
自転車で行けるところばかり♪

それにしても、
しっかりした紹介者
”ソムリエ”?
がいると、
本の世界はやっぱり面白いですね。

”ナツヨム”、楽しいです!

本↓
http://bookclub.kodansha.co.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2900173

ナツヨム↓
https://www.facebook.com/natuyomu/info


2014年7月26日土曜日

【本】「消費」をやめる 〜銭湯経済のすすめ 平川克美著 ミシマ社刊 

”デフレは起きていないんです”
に、すっきり。
やっぱりそうですよね?

通貨の価値が異常上昇して、物価が下落している...
という感覚を持った事が無く、じゃによって
”インフレ誘導”の政策方針にずっと違和感があったのですが、
本書でサクッと指摘されて、ああ、やっぱり感。

”物価が安くなったのは、低原価の品物を
低価格で売っている販売戦略なだけであって、
高額なものはキチンと高額のまま。
総体としての物価は別に下がっていない”

そこに、あえて”インフレ誘導”をして
貨幣価値を下げる戦略をとったら...。
原発停止で
”エネルギーコストが大問題”
なのに、あえて円の価値下げるんだ...???
政策は何を目指しているの??
(これは書中ではなく私の疑問)

など、特に経済問題に関しての
”なんだかもんやり違和感あるなぁ”
という部分に対して、「平川解」
をすっきり提示してくれる本でした。

ただ、全般に、
「平川さんの主張!」
を論ずる、というよりは、
「皆、聞いたなりに信じるのではなく、
 自分の感覚で考えませんか?」
との姿勢が受け取れて好感があったのですが、
他の読者さんにはどうなのだろう?

対話書き起こし、のスタイルらしく、
”データがっつり、取材深々のどっしりナレッジ”
をお求めにはちょっと軽いし、
”銭湯経済ライフスタイルのノウハウ本♪”
ではまるでないので、
(そこちょっと期待してた^^;;)
その点は誤解無い方が良いかも。

個人的には、読後のすっきり感は”銭湯”並、でした(笑)。

http://mishimasha.com/books/yameru.html

【本】あしたから出版社 島田潤一郎著 晶文社刊

この本を読んでいる途中で珈琲が飲みたくなり、
豆を挽きました。
シンプルな調整ネジ付きのミルなのですが、
見事に望みの粗さとはかけ離れた挽き上がり。

...この粗さなら、水の量を減らそう...。

この感覚で良いんだよなぁ。

べつにいい加減に手を抜いた訳ではなく
調整も考えて、
ちゃんとセットした上での挽き上がり。

もちろん、例えば私が喫茶店主で、
お客様に出すモノであれば
NG。

でも、
自分を自分で望みの”挽き上がり”にする事は、
やっぱり全然できてこなくて、
挽き直す豆もなくて生きて来て。

キチンと望み通りの挽き加減で生きられる事は
素晴らしいと心底思います。素直に。

でも、望まない挽き加減になっちゃった豆を前に、
美味しく飲むお湯の量、温度、ドリップの仕方は
いくらでもある、と。

島田さんのそれのひとつが
「本を出す」
ひとになる、事だったんだろうなぁ...などと。

テンポが良くて、”すっと入る”楽しい本でした。
「泣き上戸」な面が共感できるから?
あっという間に読了(笑)。

http://www.shobunsha.co.jp/?p=3174

2014年7月15日火曜日

【本】死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日 門田隆将著 PHP研究所刊

必読書。

比喩でなく、
「国を護る」
「世界を護る」
為に、我が命を賭すとはいかなる事か。

吉田所長のみでなく、
言葉通りに命を掛けて闘った皆さんの実録。

自らの故郷はすでに犠牲になっているのに、
国を、より広く世界を護った皆さんの物語。

この人達こそ、
愚策無策の為に犠牲にしてはならない宝だと、
あらためて思う。

なのに、止まぬ愚行。
何度繰り返すつもりなのだろう、我が国は。

2007年5月 大熊町の街角

2014年6月22日日曜日

【本】紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている 再生・日本製紙石巻工場 佐々涼子著 早川書房刊 (読後感想)

あの震災の後、何回か石巻にお邪魔しています。

2011年5月 
石巻市内のあちこちで、まだ街道沿いの2階屋の上階にクルマが突っ込んだままの頃。
日本製紙さんの”巻き取り”、巨大な紙ロールを市街で何本か見かけた気がします。
2011年5月11日 石巻市街

2011年5月11日 石巻市街

2011年7月
ちょっとだけお手伝いしていた、
関東から毎週末支援活動をされていた方に連れて行って貰って。
まだ工場からは蒸気は上がっていなかったと思います。
回収したと思われる紙ロール”だったもの”や、パルプ”だったもの”が
工場周辺にうずたかく積まれて居たのが印象的でした。

ガイドしてくれていた方が、
”ここ(日本製紙)は、自力でもうすぐ再開するらしいよ”
と言っていた話をうっすら憶えています。
とてもそんな状況には見えなかったけど...。
2011年7月23日 日本製紙工場入り口

2011年7月23日 日本製紙工場付近

2012年5月
まだまだ、なにも稼働...動き始めている気配の薄い石巻の街の中で、
海沿いに向かう路のT字の交差点の奥で、
盛大に蒸気をあげて稼働している工場が見えたとき、
本当にちょっと慄えました。
2012年5月2日 石巻市門脇付近

2012年5月2日 石巻市門脇付近
2012年5月2日 日本製紙石巻工場 おそらくボイラー棟
鯉のぼりが!
 引き込み線路があった場所が更地となり、周囲も更地か瓦礫の山ばかり、
工場内もそこかしこで重機が復旧作業をしている中、
操業の証の蒸気がもうもうと...。

この本は、その時工場で、街で何が起きていたのか?
決してきれいごとではないコトまで含めて伝えてくれています。

読めて良かった。

出版界の皆さんには、”紙”という特別な軸での側面が在る様ですが...
私には、おなじ”製造業”の面での共感が。

特に、工場長が自工場の現状認識からではなく
”ニーズ”から判断した復旧期限を示達する場面では、
小さいながらも部門を預かる身に取って突きつけられるモノが多々。

ひとからげにはできない、被災の実際を知る、という意味と、
失いかけている日本のモノづくり、のコアを知る意味で、
是非読まれて欲しい一冊です。

...読まれる際に、上記の写真が少しでもご参考になれば...。

【リンク】
紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている  再生・日本製紙石巻工場 佐々涼子著 早川書房刊

2014年6月2日月曜日

【本】”エンドロール” 鏑木蓮著 ハヤカワ文庫 刊 (読後感想)

先日、友人を亡くしました。享年47。

彼とは、学校を出て最初の就職先の同期。

同期の中に、
ありがたい事に繋がりを絶やさず取ってくれるメンバーがいて、
彼女のおかげで彼とも付かず離れず、たまに呑んでは話していました。

死別することなど意識になかった上での、突然の訃報。
正直、今後彼と会い、話す事は無くなる事への実感がまだない。

重い病から癒えきらない身体を引きずって、復職の為独りの家に戻り、
急変した容体の中、何を思って逝ったのか...。

孤独ではなかったか?

彼の葬儀含め、
諸事重なり疲労が重く、ちょっと無理を言って貰った休みの中、
盛岡で買い込んで積ん読されていたこの本に、ふと手が伸びました。

最終章に、モヤついた心がちょっと救われ...いや、ヒントが。

いずれ我が身も通る路。

一緒に「以後なんでもあり」の世の中に漕ぎ出した
”戦友”
の死に直面して、
本文中の、本物の戦友達の姿が、尚更響いてきたたような気もします。
...僕らに隠したい過去は無かったけど。

孤独死だけでなく、生き続け、忘れるべきでない戦争の傷、
今なお静かに進んでいる過疎、限界集落の姿などに
「直面した時の景色は?」
についても、細かく実感が湧いて来る本でした。

”エンドロール”
元々の「しらない街」からの改題で、
改題の提案者がよく知る書店の店長さんだと知ったのは買ってから後(笑)。
彼が巻末の解説も書いていますが、
そこにある通りに...。本当に、届けてくれて感謝です。

http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/21144.html

2014年5月16日金曜日

大学・考

”大学卒なので、自動的に給与が高い、昇格が早い。”

これが、中身を失っているのに延々と継続されているのが、
諸々ダメになっている元凶なのではないかなぁ。

元々、多分昭和初期あたり、大学とは
”世を背負って立つ、知的エリートの育成機関”として、
選りすぐりのごく少数の人材を排出していて、
その人材達も世の期待を認識していたんじゃないかと。

大学を出たからには、「公利」を導く先達に。

なので、世の中は彼らに報いるべく優遇したんだと思う。
ま、枝葉はともかく。
高等教育機関に対する様々な法的優遇も、
そこが正当性の根拠だと思うんですよね。

ところが昨今、その「優遇」は”大学卒”という切符を持つ者の
「権利」
だと位置づけられ、
”とにかく切符があるから優遇は当たり前”
に。
これは「公利」ではなく、まんま「私利」の追求だよなぁ。

じゃぁ、出来るだけ効率よく=勉強や努力は最小で切符を!
魚心に水心、より多く払えばより簡単に...。ビジネス化。

自然な流れ。

となれば、”学び最小”、本来なら入学も覚束ないレベルの人材が
”大学卒”として蔓延し、「優遇」は赤字化するのも自然な流れ。

現実に...
「赤字なのでは、止めれば良いのに」
でも、この優遇システムは、大企業では
殆どの場所で未だに堅持されていますね。
何故?...。

純粋に
”最高学府で学ぶ事への憧れ”や、
”大学でなければ、という学びたいなにかがある!”
ので大学を目指す皆さんはリスペクトしてます。

そして
”全力で学んだ”
皆さんの方が、まだまだ多い!と信じたいものです。

実際、そのまま研究の路を歩んだり、
素敵な皆さんも沢山存じていて、尊敬もしています。

でも、
採用担当として目にしたり、実際入ってくる大卒さん達を観ると...。

やはり、自動的に「優遇対象」に入れてしまうのは、
もう止めるべき...と思います。
時代としても。
そうなれば、「切符」の発行ばかりが目的の大学も減るんじゃなかろうか?
...そんなにシンプルではないか。

いずれにせよ、
ラベルではなく、本人をしっかり査定できる様にならないと。赤字に。
ま、自社は学歴条件無いのですけどね。
(作ろうとしている向きはあるけど)

雑感。