2014年6月22日日曜日

【本】紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている 再生・日本製紙石巻工場 佐々涼子著 早川書房刊 (読後感想)

あの震災の後、何回か石巻にお邪魔しています。

2011年5月 
石巻市内のあちこちで、まだ街道沿いの2階屋の上階にクルマが突っ込んだままの頃。
日本製紙さんの”巻き取り”、巨大な紙ロールを市街で何本か見かけた気がします。
2011年5月11日 石巻市街

2011年5月11日 石巻市街

2011年7月
ちょっとだけお手伝いしていた、
関東から毎週末支援活動をされていた方に連れて行って貰って。
まだ工場からは蒸気は上がっていなかったと思います。
回収したと思われる紙ロール”だったもの”や、パルプ”だったもの”が
工場周辺にうずたかく積まれて居たのが印象的でした。

ガイドしてくれていた方が、
”ここ(日本製紙)は、自力でもうすぐ再開するらしいよ”
と言っていた話をうっすら憶えています。
とてもそんな状況には見えなかったけど...。
2011年7月23日 日本製紙工場入り口

2011年7月23日 日本製紙工場付近

2012年5月
まだまだ、なにも稼働...動き始めている気配の薄い石巻の街の中で、
海沿いに向かう路のT字の交差点の奥で、
盛大に蒸気をあげて稼働している工場が見えたとき、
本当にちょっと慄えました。
2012年5月2日 石巻市門脇付近

2012年5月2日 石巻市門脇付近
2012年5月2日 日本製紙石巻工場 おそらくボイラー棟
鯉のぼりが!
 引き込み線路があった場所が更地となり、周囲も更地か瓦礫の山ばかり、
工場内もそこかしこで重機が復旧作業をしている中、
操業の証の蒸気がもうもうと...。

この本は、その時工場で、街で何が起きていたのか?
決してきれいごとではないコトまで含めて伝えてくれています。

読めて良かった。

出版界の皆さんには、”紙”という特別な軸での側面が在る様ですが...
私には、おなじ”製造業”の面での共感が。

特に、工場長が自工場の現状認識からではなく
”ニーズ”から判断した復旧期限を示達する場面では、
小さいながらも部門を預かる身に取って突きつけられるモノが多々。

ひとからげにはできない、被災の実際を知る、という意味と、
失いかけている日本のモノづくり、のコアを知る意味で、
是非読まれて欲しい一冊です。

...読まれる際に、上記の写真が少しでもご参考になれば...。

【リンク】
紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている  再生・日本製紙石巻工場 佐々涼子著 早川書房刊

2014年6月2日月曜日

【本】”エンドロール” 鏑木蓮著 ハヤカワ文庫 刊 (読後感想)

先日、友人を亡くしました。享年47。

彼とは、学校を出て最初の就職先の同期。

同期の中に、
ありがたい事に繋がりを絶やさず取ってくれるメンバーがいて、
彼女のおかげで彼とも付かず離れず、たまに呑んでは話していました。

死別することなど意識になかった上での、突然の訃報。
正直、今後彼と会い、話す事は無くなる事への実感がまだない。

重い病から癒えきらない身体を引きずって、復職の為独りの家に戻り、
急変した容体の中、何を思って逝ったのか...。

孤独ではなかったか?

彼の葬儀含め、
諸事重なり疲労が重く、ちょっと無理を言って貰った休みの中、
盛岡で買い込んで積ん読されていたこの本に、ふと手が伸びました。

最終章に、モヤついた心がちょっと救われ...いや、ヒントが。

いずれ我が身も通る路。

一緒に「以後なんでもあり」の世の中に漕ぎ出した
”戦友”
の死に直面して、
本文中の、本物の戦友達の姿が、尚更響いてきたたような気もします。
...僕らに隠したい過去は無かったけど。

孤独死だけでなく、生き続け、忘れるべきでない戦争の傷、
今なお静かに進んでいる過疎、限界集落の姿などに
「直面した時の景色は?」
についても、細かく実感が湧いて来る本でした。

”エンドロール”
元々の「しらない街」からの改題で、
改題の提案者がよく知る書店の店長さんだと知ったのは買ってから後(笑)。
彼が巻末の解説も書いていますが、
そこにある通りに...。本当に、届けてくれて感謝です。

http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/21144.html